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誰にも書けなかった戦争の現実 の感想

 本書はWWⅡについてのノンフィクション。ブックオフで200円で売ってたので読んでみたけど値段以上の価値があった。

 WWⅡに関するドキュメントは全く読んだことがなくて、これが初めてだけど、非常に詳細かつ広範に調べられていると思う。まず本がとても分厚い。ハードカバーで500ページある。また、著者はWWⅡ従軍者で、内容にも信頼が持てるんじゃないかと思う。

  これを読んでわかったのが、戦争と一言でいうけど、その全体像をとらえるのは全く簡単じゃないこと。最近北朝鮮がどうとかアメリカがどうとかできな臭いけど、北朝鮮なんて戦争してつぶしてしまえじゃなくて、戦争は想像の埒外にあると自覚するのは70年戦争してない国の国民として大事なんじゃないかなと思う。

 歴史の教科書と本書が決定的に袂を分かっているのは、本書がもっと戦争にかかわった個人に接近して考察していること。例えば頻発した新兵の誤射とか、とどまるところを知らなかった噂、戦争に直接参加していなかった市民たちの心理などなどについて証拠と理由、実際にあった出来事を明示して考察していること。ただ後半のほうになると当時のラジオや本など、文化的な面を取り上げているが、これはむしろ詳しすぎて前提知識ないとよくわからないと思ったので2章分(50ページくらい?)くらいは飛ばした。

 全く戦争になじみのない平成生まれとしてはどの章も驚くことばかりでそのいちいちを上げていくと本書がもう一冊出来上がってしまうぐらいだけど、一番衝撃的だったのは最後の章「睾丸にも弾はあたる」。大砲の破片ではなく、大砲で吹き飛ばされた仲間にあたって怪我をした兵のエピソードとかとか。かなり心にくる。

 ただ唯一の欠点が、「写真や図が全くない」こと。ポスターや写真が本文で紹介されてるけど実物がないとイメージがわきにくい。まぁポスターに使われている広告的技法じゃなくて、それがもたらしたor表した影響について述べているのでなくても構わないものではあるかもしれない。

 戦争は一括りにかくかくしかじかと型にはめることができないということに気づかせてくれたという点で貴重な読書体験だったと思う。