「戦争」の心理学/デーヴ・グロスマン 感想
前書きに書いてある通り、とても実践的な本でした。
- 作者: デーヴ・グロスマン,ローレン・W・クリステンセン,安原和見
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2008/03/01
- メディア: 単行本
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本書の特徴は一貫して戦士のために書かれていることです。戦闘は当事者に重大な心理的影響をもたらしますが、筆者によればあらかじめその影響を知っておくことで負担を軽減できるそうです。そのため、戦闘にかかわった人の体験談が非常に多いです。筆者の主張だけではなく、第三者の視点があることで説得力が増しています。それに一つ一つの話が、戦闘を経験したことのない私にとっては衝撃でした。ww2では大小失禁を経験した兵士がそれぞれ1/4,1/8いる、というのはびっくりしましたね。実際はもっといるらしいです。失禁とか悪役の下っ端がするイメージしかないですが意外と普通なんですね。体験談もとても参考になりますが、筆者の印象だけでなく調査に基づく具体的な数字も示してくれるのでとても信頼できます。
いろいろ驚いたことはあるのですが、朝鮮戦争では戦闘中に命を落とした兵士より精神を病んで離脱した兵士のほうが多い、とか敵の姿が見えた時に発砲した兵士は2割しかいないって話は意外でした。本書では簡単に戦争の歴史を紹介していますが、それによると戦争では昔から肉体と同じかそれ以上に精神面が大事らしいです。私はてっきり戦争に行けば銃が撃てるようになるもんだと思ってました。
ここまで大局的な話しかしてきませんでしたが、実際は戦闘がもたらす特殊な精神状態など、もっと個人的なレベルでの話も載っています。記憶混濁、体感時間の延長、心拍数による運動能力の変化などなどたくさんの事例が紹介されています。
ちなみにゲームとメディア批判にもかなりのページが割かれています。正直ここは言ってることが傾きすぎかなーとは思いました。でも暴力的なゲームが子供に悪影響を与えるというのはどうも事実みたいです。一ゲーム好きとしてはちょっと困るところでした。筆者の言うような全面禁止ではなく子供が影響を受けないように教育すべきなんじゃないでしょうか。
あとシェークスピアとか文学作品からの引用めっちゃ多いです。正直読み飛ばしてましたすいません。
多くの事例が細かく、網羅的に紹介されているので戦争系の創作するときに使えるんじゃないかなと思いました。